「生きてる・・ってなんだろ?」    


           
肋骨を骨折した叔父の入院見舞いをして、部屋を出る時なぜか…。

どこからか風が吹いてきたような気がした。

この感覚はなんだろう?

寂しい感じ。ひやりとした静けさ。

ゆっくりと花が枯れてくような 
不思議な光と影が 古いモノクロ写真みたいに
音もなく 
影だけ残して静かに静かに・・流れて行った。

流れて行った・・のは、時間?
それとも・・ 

ただただ ベッドの上に横たわる人の 
笑顔を 決して忘れてはならない・・
この瞬間が永遠になる気がして 大事にしたいと思った。

たぶん これで最後のお別れに。
言葉を交わすのは この瞬間が最後だと。

耳元で誰かが 囁いた。 
一ヵ月後、 退院した・・って聞いて、
たまには小夏の予感も外れる事あって良かったと 思ったのに。。

もう1度その病院へ足を運んだ時は、ICUでたくさんのチューブに繋がれた
物言わぬ 叔父の眠る姿に残念な思いで いっぱいになった。
真ん中の兄貴に 
耳は聞こえてる・・って聞いた事あるから、なんか話しかけてあげなよぉ。
って言ったけど。 なに言うたらいいのか 分からん。。って。

辛かったやろ?しんどかったやろ?
びっくりして 怖かったやろ?
苦しかったやろな?可哀そうなことになってもたなぁ。。って小夏が言った。

ふと 隣を見ると
事故でとても お気の毒な人の姿が 目に入る。
つられて兄嫁も見そうになって・・大慌てで止めた。
見ん方がええよ。

叔父はやせ細っても 昔と変わらず 男前のまま眠り続けている。
日本人離れした彫りの深さは ロシア風だ。



その日の夕方。
花が少しずつ枯れて行くように
叔父は逝った。

こんなきれいな顔のままで。。